【今日の朝日新聞より】ヘリコプターマネー。極論も選択肢になる現実 (2016.6.14-7面 経済)

(波聞風問)ヘリコプターマネー 極論も選択肢になる現実 原真人

半世紀前、経済学者ミルトン・フリードマンは景気刺激のために「ヘリコプターマネー」という思考実験をしてみせた。実際には空からお金をまくのでなく、中央銀行が大量の紙幣を刷って人々に配るという想定だった。
この構想はずっと封印されてきた。現実世界ではリスクが大きすぎるからだ。やれば政府も中央銀行も信用を失い超インフレになりかねない。
その禁断の策が最近、世界の金融専門家の間で再び話題になってきた。そして、こうささやかれている。「すでに日本ではヘリコプターマネーがまかれているじゃないか」

政府予算には年間30兆円以上の赤字があり、その穴を国債を出して埋めています。その国債を買い支えているのは日銀で、視点を変えると日銀がヘリコプターマネーで30兆円を配り、国民はそれで医療や介護などの行政サービスを買っていると見ることもできるそうです。

安倍首相は先日、消費増税の再延期をしましたが、これにより、日銀に借金を返せるようになるかどうかが不透明になりました。

この事態に、岩村早大大学院教授は、日銀が持つ国債の「永久債化」という大胆な提案を発表しました。今のまま実質ヘリコプターマネーがなし崩し的に膨張していけば、いずれ日本経済、世界経済を崩壊させかねないので、まずは見えにくかったリスクをあぶり出す。あらかじめ超インフレに備えて巨額マネーの回収手段を確保しておく。現状がヘリコプターマネーだとはっきり認め、危機をやわらげる手段を真剣に考えておこうという発想です。

「永久債化」すなわち、返済の満期を設けず塩漬けにするというのは、国債や通貨円の信用を揺るがしかねない暴論に思えます。しかし、逆に言えば、そういった提言が出てくるほど切羽詰まっている状況の表れとも言えます。

消費税を延期したという選択をしたことで、社会保障をはじめ、財政再建は確実に遠のきました。参院選では、庶民の味方のふりをした耳当たりのよい言葉に惑わされず、財政再建をいかに真剣に考えているかを見極めていきたいと思っています。

佐々木敬太郎


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